キャリアアップすることで視界に写るものが違ってくる
キャリアアップすることで視界に写るものが違ってくる
キャリアアップという言葉をご存知でだろうか。キャリアアップは自分の「経歴」を上げていくことを差した言葉だ。転職業界でよく出てくるスキルアップという言葉とよく似ているが、スキルアップは「技術」や「能力」を上げていくことなので、意味は全く異なる。 キャリアアップという言葉は、例えば今後、管理職に就いたり、また違ったキャリアを積むためにいろいろな仕事を経験したい、そのように考える人が使用する言葉だろう。おそらく派遣社員やアルバイトの道を選んだ人の中にもこういう理由を含んだ人がいるのではないだろうか。 前にもお話したとおり、管理職に就くことも、さまざまな職種を経験することも悪い事ではない。知らなかった知識を得る事は山を登る事と似ていて、前に進めば昨日とは違う景色が見えてくるものだ。
今回は、管理職の方ではなく、私の知り合いがさまざまな職場を経験して得た経験をお話したい。
新しいチャレンジは新しい気づきを知る事ができる
私の知り合いで介護業界に携わっているAさんという方がいる。Aさんは医療業界で看護師として臨床を経験したのち、介護の世界で新たにチャレンジをした。治療が必要な患者さんの看護から、慢性期の患者さんの日常生活の補助を行う介護へ。
介護の世界の第一歩は訪問入浴サービスという介護サービスのうちの一つで、利用者さんの自宅で入浴介助を行うところだった。 看護と介護は似ているようで少し違う、介護は看護と違って医療行為が必要ではない。看護師として医療行為なしで患者さんと触れ合ういうことを初めて経験したことで、彼女はますます責任感を感じるようになったと言っていた。
医療の世界では、看護師は医師の診察の補助が義務づけられている。簡単に言えば患者さんの異常に気づけば医師に報告し、判断を仰いでもらわなければならない。
しかし介護の世界では、看護師が利用者さんの状態を把握し、医療行為を除いてしかるべき判断をしなければいけない。バイタルサインや全身の皮膚の状態、呼吸、関節拘縮の有無など、内科から外科の知識が要求される。もちろん患者さんに異常があった場合、かかりつけ医に連絡を取るのも看護師だ。そこに何一つ見過ごせない責任が生まれたのだ。
在宅において看護師に出来ることは限られている。しかしそれでも医者並みに知識を持っていなければ介護は出来ないとわかったそうだ。先ほども述べたが、もし異常に気づけなかった場合、その責任は看護師にかかる。
皆で順番に看護していた臨床と、一人で状況把握及び判断しなくてはならない介護の世界とでは見える景色が違ったとAさんは言っていた。
そこでAさんは気合いを入れ直して在宅看護(介護も含めた在宅の看護)について学ぶことにした。看護師としてキャリアをあげていくためにスキルアップは必然だったのだ。
激変する現在の世の中で激変する私たちの価値観
この一年、新型コロナウイルスによって私たちの働き方というものが大きく変わってしまった。
Aさんのようにキャリアを広げていきたいと思っても、まず働く場所がどんどん閉鎖されている。 もちろんその背景には、毎朝ぎゅうぎゅうの満員電車に連れられ会社に行かなくとも自宅でテレワークができるようになり、利便性の高い都会ではなく、家賃の安い地方へ引っ越す人が出てくるなど、社会全体の有り様が大きく変化している。
学校を卒業する時に描いていた具体的な夢に大きな変化が訪れようとしている可能性がある。不憫かもしれないが、もうこれまでと同じように働くというのは難しいとさえ思ってしまう。新しい生活様式に順応しようと試行錯誤している毎日だ。
その一方で、日本の失業者は増え続け、非正規雇用の人たちが職を失うという現実があり、大手企業も新卒の求人募集を中止にするなどの動きも見られる。だからこそ今ここで自分のキャリアというものを見直さなければならない状況になったと言えるのではないだろうか。コロナ禍では人によっては、Aさんが看護の世界から介護の世界へ飛び込んだように、違う景色を見にいくべき状況である方が沢山いる。 これはマイナスなイメージかもしれないが、自分のキャリアを積んで理想の自分になるために、又この急に変わっていく世の中で生き延びるために思い切って新しい事にチャレンジしてもいいだろう。
前にもどこかで話したが、違う景色というのもそんなに悪いものではない。
慣れ親しんだ景色とオサラバしないといけないなら、むしろこっちから土地を開拓してやろうという気持ちで取り組んでいこう。開拓してみれば案外そっちの方がよかったと思うことも結構ある。
社会が変化している最中、その渦に飲み込まれる私たちは自分の船を確保するだけで大変な苦労だ。しかし嵐は必ず去っていく。ふと風が止んで凪いだ海原、元に居た場所とは全く違う所に飛ばされているけれど、そこから見える夕焼けは綺麗だったりする。 そこから船の漕ぎ方を変えても遅くない。大事なのは今一度、自分の働き方や生き方を見直していくこと。
キャリアアップとはまさにより多くの景色を知ることではないかと思う。
株式会社SGI
代表取締役 高本佳明
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